ジュリーニが愛したドヴォルザークの8番
最近は演奏会の感想が続いていて、今日は久しぶりのアルバム紹介。今回はイタリア出身の指揮者カルロ・マリア・ジュリーニ(1914年〜2005年)がシカゴ交響楽団と1978年に録音したドヴォルザークの交響曲第8番のアルバムを紹介します。
ジュリーニが愛したドヴォルザークの8番。録音は3回おこなっています。1回目が1962年のフィルハーモニア管弦楽団、2回目が1978年の今回紹介するシカゴ響、そして3回目が1990年のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのライヴ録音です。フィルハーモニア管でも歌うようなジュリーニらしさがありましたし、コンセルトヘボウ管とはどっしりと重厚で渋い響きが特徴的でしたが、明朗なサウンドと歌心溢れるシカゴ響との録音が私は最も気に入っています。
当時、音楽監督のサー・ゲオルグ・ショルティとのコンビでシカゴ響は黄金時代を迎えていましたが、ショルティを鷹派、そして首席客演指揮者(1969年から1972年まで)のジュリーニを鳩派として使い分けてさらに成長していきました。ジュリーニは首席客演指揮者を退任してからも1978年までは定期的にシカゴ響の指揮台に上っています。幅広いレパートリーを持つショルティもドヴォルザークはあまり積極的ではなく、唯一録音した第9番「新世界より」も1983年で70歳を超えてからでした。そのシカゴ響がジュリーニと、しかもドヴォルザークの中でも最も美しい第8番を、というのは期待が高まります。
歌心溢れるドヴォルザーク
このアルバムを聴くといつも幸せな気分になれるのですが、それはジュリーニが大事にした歌心が、シカゴ響というスーパーオーケストラで遺憾なく引き出されているからです。
第1楽章の冒頭から驚かされます。本来の調性「ト長調」とは違う「ト短調」で始まる導入部では、木管とチェロによって哀愁が漂いつつも、温もりを感じるような演奏で始まります。この部分ではレーレーというように同音が反復する旋律があるのですが、ジュリーニは滑らかなレガートでつないでいきます。ト長調の第1主題に入ると明るくて一点の曇りもない明朗なサウンドやトゥッティでの気迫。これがシカゴ響とのコンビで聴けるドヴォルザークです。
穏やかな第2楽章もヴァイオリン・ソロが際立っていますし、何と言っても必聴なのは第3楽章でしょう。ジュリーニらしい歌心が溢れています。第4楽章ではトランペットのファンファーレから始まりますが、金管セクションがパワフルな当時のシカゴ響のポテンシャルもさることながら、ジュリーニの指揮によってレガートにつむがれていきます。
今回はドヴォルザークのみ紹介しましたが、アルバムでカップリングされているのシューベルトの交響曲第4番ハ短調「悲劇的」。こちらの記事で紹介した交響曲第7番「未完成」と同じオーケストラ・ホールで同時期に録音しています。
まとめ
ジュリーニが愛したドヴォルザークの8番を全盛期のシカゴ響で聴けるアルバム。明朗なサウンドと歌心で、聴くと幸せを分けてもらえる私の中の必聴アルバムです。
オススメ度
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
シカゴ交響楽団
録音:1978年3月, シカゴ・オーケストラ・ホール
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廃盤のため無し。
試聴
Apple Music で試聴可能 (ディスク3がドヴォルザークの8番)
受賞
特に無し。
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