クラシック音楽はレコーディングが膨大にあるので、初心者の方がこの大海原の中を一つ一つ聴いていくのはいくら時間があっても無理でしょうし、お金も掛かります。どのレコーディングから聴いたら良いのか迷ったときに、例えば過去の音楽賞を受賞したレコーディングを調べてみるとか、レコードショップのWebサイトの商品レビューを見てみるとか、実際にレコードショップに行って定員さんにオススメを聞いてみるとか、あるいはこのWebサイト「音楽の羅針盤」のようにクラシック音楽のオススメの演奏を紹介するWebページやブログを見て参考にしてみる、とかあると思います。

ただ、調べるのも時間が掛かりますし、人によって意見が違うこともあるし、何を信じて良いのか路頭に迷うこともありますよね。いっそのこと、耳の肥えた人がオススメするレコーディングを聴いてみたほうが早いな、と思います。

小説「海賊と呼ばれた男」や「永遠の0」でベストセラーとなった百田尚樹さんは19歳のときからクラシック音楽を聴き続け、2013年時点で30数年経ち所有するCDの数が2万枚以上もあったそうです。

クラシック音楽の愛好家でもある百田さんは、初心者の方がクラシック音楽を聴いてみたいという気持ちになるように、そして同時にクラシック音楽のマニアの方がいつも聴いていた曲にこんな魅力があるのかと再発見できるように、このエッセイを書いていたそうです。それが『至高の音楽』(PHP研究所、2013年初版)としてCD付きで出版され、2015年にはCD無しで新書でリーズナブルな価格でも出版されています。

百田尚樹「至高の音楽」(PHP研究所)
百田尚樹「至高の音楽」(PHP研究所)

私も2013年12月に本屋をブラブラしていたときに、この本を見つけ、早速買ってみました。そのときは初版でした。こちらのFC2ブログの記事に感想を書いていますが、この本はこれからクラシック音楽を聴こうとしている方やもっと色んな演奏家の演奏を聴いてみたいと思っている方にはオススメです。

その理由は、

  • クラシック音楽の26曲を紹介していますが、初心者でも聴きやすい楽曲を選んでいます。
  • 2万枚以上のCDを聴いてきただけあって、演奏評が信頼できます。
  • ヒーローものの小説を書いてきた百田さんらしく、ズバッとした書き方で理解しやすいです。一部のプロの音楽評論家の分かりづらい文章を読むよりよっぽど分かりやすいです。
  • 音楽の専門用語が出てこないので、楽典や楽譜の知識が無くても読みやすいです。
  • CDが付いているので、読みながらBGMとして聴くことができます。聴きどころを抜粋しているので、ポップスでいう「サビ」の部分だけ聴けます。(単行本のみ。新書や電子書籍ではCD無し)
  • CDはユニバーサル・ミュージックの音源が提供されています。ドイツ・グラモフォンやデッカ、フィリップスのレーベルを抱えているので、ベーム、ショルティ、グルダ、アシュケナージ、ジュリーニなどの演奏が聴けます。(単行本のみ。新書や電子書籍ではCD無し)

私も先週から数年ぶりにこの本を読み直してみましたが、良い本ですね。私のレコーディング紹介の記事をちまちま読むよりもこの本を読んだほうが有益かもしれません。

ただ、百田さんも一人の人間なので、どうしてもオススメの演奏紹介に個人的な好みが出ています。オススメとして多く登場するのが指揮者だとヴィルヘルム・フルトヴェングラー、ヘルベルト・フォン・カラヤン、サー・ゲオルグ・ショルティ、フリッツ・ライナー。ピアニストだとフリードリヒ・グルダやヴラディーミル・アシュケナージ、スヴャトスラフ・リヒテル。私も聴いたことがあるレコーディングも多いので、百田さんのオススメには納得ですが、特に豪快な演奏を好んでいるかなという傾向です。

逆に出てこない演奏家は、指揮者だとレナード・バーンスタインやベルナルト・ハイティンク、マリス・ヤンソンスあたり。2万枚以上のCDを持っているなら聴いているはずだとは思うのですが、26曲のオススメには出てきません。私は百田さんが紹介していない演奏でも「良いなぁ」と思う演奏は多くありますので、こうした耳の肥えた方の意見を参考にしつつ、自分なりのクラシック音楽を探してみる、というのが良いのかもしれません。

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