指揮者のホープ、クラウス・マケラが今年はオスロフィルと来日
フィンランド出身の指揮者、クラウス・マケラ。1996年1月生まれなので現在27歳という若さで、既にノルウェーのオスロ・フィルハーモニー管弦楽団 (2020年〜)、フランスのパリ管弦楽団 (2021年〜)の首席指揮者を兼任し、2027年にはオランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任予定という、まさに指揮者のホープ。
世界のトップ3にランクインするコンセルトヘボウ管のシェフに就くというニュースが2022年6月に出たときに日本でも注目を集めたマケラですが、昨年(2022年)はパリ管弦楽団との来日を果たしました。招聘(へい)したavex classics の社長が「世界中からオファーが殺到しているマケラとパリ管の組み合わせは、今年を逃したら次はいつ呼べるか分からない」と語っていたほど。
そのマケラが今年はオスロフィルとの来日を果たしました。
マケラのデビュー盤となったシベリウスの交響曲全集はこちらの記事でも紹介しましたが、本場フィンランドの指揮者としてのプライドを感じる演奏で、早くもオランダではエジソン賞を受賞する高評価。
オスロフィルの来日2023については、招聘したavex classics が特設ページ(https://avex.jp/classics/opo2023/)を作っています。
2つのプログラムのうちオール・シベリウスのプログラムBを聴きに
私は10月24日(火)のサントリーホールでのプログラムB のシベリウスの演奏会に行ってきました。
開場前に既に長い列ができていたサントリーホール。マケラとオスロフィルへの期待値の高さを伺えました。
日本の聴衆からも高い支持を得たシベリウス
演奏会は19時からでしたが、15分前ぐらいにティンパニ奏者だけが壇上に現れて練習を始めました。
タ、タ、タ、タ、タタターン。
このリズムは、シベリウスの交響曲第2番第4楽章だなぁと思いながら聴いていると、定刻前にティンパニ奏者はいったん引き上げていきました。
開演になったらオーケストラのメンバーたちが登壇。チューニングの音合わせの後、マケラが登場。舞台に姿を現すだけで空気が明るくなったようで、遠目でも長身で際立つ立ち居振る舞いでした。
前半はシベリウスの交響曲第2番。全集をCD で聴いたときは透明感が特徴だと感じたオスロフィルとマケラのコンビですが、この実演を聴いてイメージがガラッと変わりました。まるでスーパーオーケストラというべききらびやかさとスケールがあります。
マケラがすっと手を伸ばすとオケの奏者が自然についてきて、手をパッと止めるとピタッと鳴り止みます。吸い付くようなしなやかさ。
この第2番はレコーディングしたときよりもマケラ自身も様々なトップ・オーケストラと経験を積み、オスロフィルともより密な関係になっていることを感じられ、この曲に新たな一面をもたらせていました。よりシベリウスの内面さを引き出す解釈でこの曲にこれほど感情が含まれていたんだと気付かされました。第3楽章でのトリオ後のスケルツォは激しくて、マケラもジャンプするようにヒートアップします。足元ではピカピカに黒光りする靴の上に真っ赤な靴下が見えました。ややデフォルメされてるのはフレッシュな若さも感じます。
第2番を演奏し終わると、まだプログラムの前半なのに鳴り止まない拍手にマケラは4回もカーテンコールをしてくれます。ものすごい盛り上がり。
休憩を挟んで後半は交響曲第5番。シベリウスのより洗練された魅力を、マケラとオスロフィルはこれまた見事な演奏で引き出してくれます。マケラの手が下りるとすぐに「ブラボー」の掛け声も出ました。
拍手に応えて「シベリウスの美しい作品を演奏できて嬉しい。アンコールではもっと若いときの作品を演奏します」という旨をマケラが英語で発言し、演奏されたのは「レンミンカイネンの帰郷」。2018年にマケラが日本デビューで東京都交響楽団を指揮したときにも演奏した作品です。
アンコール後にオーケストラのメンバーが撤収しても続く拍手に応えて、マケラは独りで舞台に上がってくれました。
若い指揮者のホープはどんなもんだろうと聴きに来た方もいたと思いますが、この演奏会で日本の聴衆からも高い支持を得たことを確証しました。すごい指揮者が出たなぁ。
指揮:クラウス・マケラ
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
演奏:2023年10月24日, サントリーホール
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